新八角 『小説 劇場版モノノ怪 唐傘』 (角川文庫)

「これが……大奥だというのか。

三郎丸はとうとう全身から力が抜け、頽れた。

「こんなものが……」

三千人の女が暮らす大奥の門を、新人女中のアサとカメがくぐる。大餅曳の儀を前にして落ち着きのない大奥に、情念がモノノ怪となり、やがて事件が起こる。

今月末公開の『劇場版モノノ怪 唐傘』のノベライズ。淀んで腐った水が留まり、女たちの腹の見えない権力争いと情念が渦巻く大奥の雰囲気は十二分。嗅覚に訴えてくる文章が怖い。実質的な主人公ともいえる、アサとカメの対象的な姿も印象深い。原作の知識はまったくないのですが、大奥小説として、妖怪小説として良かったと思います。



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