篠谷巧 『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』 (ガガガ文庫)

「昔行った夏祭りも、全然違う場所のお祭りも、全部繋がってるような感じがする。小学生の頃に三狛江で夏祭りへ行った私も、三十歳になって、そのとき住んでる町の夏祭りへ行った私も、みんなこの会場のどこかにいる気がする」

その発想はとても魅力的で、ドキリとする何かがあった。

2023年7月。受験勉強の本格化を前に、幼なじみの宗太にそそのかされた理久は、疎遠になっていた幼なじみ四人で深夜の旧校舎に忍び込む。するとそこには、宇宙服を来た白骨死体が鎮座していた。

第18回小学館ライトノベル大賞優秀賞。高校最後の夏、旧校舎で見つけた宇宙飛行士の白骨死体の謎。『星を継ぐもの』になぞらえ、「チャーリー」と名付けた白骨死体の謎に、疎遠になっていた幼なじみ四人が挑む。『星を継ぐもの』へのド直球のオマージュを捧げた、冒険と青春の小説。大長編ドラえもんのような味もあり、『スタンド・バイ・ミー』のようでもある。

いくつもの謎が収束と発散を繰り返し、それに合わせるかのように疎遠になっていた幼なじみ四人の距離もいろいろな形に変化してゆく。みずみずしいテキストの青春小説であることは間違いないのだけど、そもそもこれは本当に『星を継ぐもの』をオマージュしたSFなのか? というところは終盤まで読まないとわからない。新鮮な読み口だった。なんというか、あえてオーバーに言うと、あくまでSFであろうとするジャンルSF一般への挑戦でもあるのかな、と思った。ちょう楽しかったです。『星を継ぐもの』も読み返したいなあ。

kanadai.hatenablog.jp
最後に読んだのが16年前か……