鳴海雪華 『余命わずかなキミと一緒に、初恋を探しに行く』 (MF文庫J)

噂は消え、変わるところは変わり、変わらないところは変わらず。エモいことを見つけられていないのに、僕らの日常は歪むだけ歪み、摩耗し、そして消費されている。

高校生の柊透葉は、クラスメイトの暁月杏の「エモ探し」に協力していた。深夜のプールに忍び込んでみたり、夕焼けに照らされた教室でたそがれてみたり。暁月にはふたつの秘密があった。ひとつは彼女が中学卒業まで生きられないと余命宣告されていたこと。もうひとつは、「エモさ」を「寿命」に変えて生きていること。

宣告された余命を伸ばすため、ふたりの高校生は世間で「エモい」とされるものを探し求める。「エモい」という、曖昧で軽くていろいろな意味を内包して、決まった定義はなく簡単に意味の変わる言葉。それに真摯に向き合い、考えぬいて書かれた小説だと思う。「エモい」の理解と使い方は随一だと思う。見つけては喰い尽くされ、命と引換えに空虚なものになっていく「エモさ」には、デビュー作と同様、終わりと破滅のにおいが強く漂う。とても良い青春小説でした。デビュー作も好きだったので、併せて読まれてほしいな。

「ねえ柊くん、結局、エモいってなんなんだろうね」

木の幹の中程で、暁月がそう話しかけてくる。

「やっぱりさ、前まではもっとシンプルだったはずなんだ。世界があって、わたしがいて、綺麗なものとか目新しいものに言語化できないような意味を見出して。それで、エモいって思えていたはずなんだ。なんの疑問もなくエモいって言えてたはずなんだよ」

暁月の声には後悔も落胆もなく、ただ純粋な疑問だけがあった。

「わたしたちを取り巻く環境は、いつから変わっちゃったんだろうね」



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