紙城境介 『シャーロック+アカデミー Logic.3 カラスが虹に染まるとき』 (MF文庫J)

俺にとっての……探偵。

少なくとも、穂鶴が言うような、真実を解き明かせば何をしてもいい、というものじゃない。

だからと言って、伝記小説で読んだ知的好奇心の塊でもなければ、正義のヒーローでもない。

俺にとって、探偵とは――

「――最後まで、考えることを諦めない人間のことです」

真理峰探偵学園の総合実技テストが始まる。実際の街中で発生する、大量の模擬事件を解決するという、実践的な推理力を測る試験。不実崎は詩亜たちとチームを組んで試験に挑むことにする。そんな彼らの前に現れたのは、かつて不実崎を冤罪に陥れた同級生の穂鶴黎鹿だった。

模擬事件に紛れ込む「本当の事件」。現実と虚構が入り乱れる総合実技テストで、不実崎は罠にかけられる。システムとルールの仕組まれた総実テストの進行や、「ヘンペルのカラス」を初めとした推理ロジックに並行して、「探偵」のあり方を描いてゆく第三巻。「探偵学園」だからこそできるアリバイトリックに、総合実技テストという体で進んでゆく、ミステリプロパーではやりにくいであろうストーリー運び。探偵学園という舞台をこれ以上なく活かした探偵エンターテイメント小説だと思う。いろいろと詰め込みながらもリーダビリティは高く、あっという間に読んでしまった。良いものでした。

「提示した証拠も、並べ立てた推理も、全部全部嘘。ただのフィクション。……この台詞、憧れてそうだから言ってあげる――あなた、探偵じゃなくて作家になった方がいいんじゃない?」