野﨑まど 『小説』 (講談社)

小説

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本を読む。小説を読む。読んでいる間は物語の中にいる。読んでいない時は泥の中のような気分でいる。大好きだった本を読めば読むほど自分が人として駄目になっているように思えた。小説を読むことが頭の中で逃避や慰めという言葉と繋がってしまうのが辛かった。そうでないと思いたいのにその根拠が見つけられない。無意識にハッピーエンドの本を探してしまっていた。小説をまっすぐ見られなくなっている自分に気づいて一人で泣いた。けれど読んだ。毎日生き、毎日読んだ。小説を読むことが生きることだった。

五歳で読んだ太宰治をきっかけに、内海集司の人生は小説を読むことに捧げられることになる。小学六年生になった集司は、その後の生涯の友となる外崎真と出会う。ふたりで小説家の髭先生が住む小学校近くの屋敷に入り浸り、ひたすら小説を読み続けた。

小説に出会い、そして小説に引き合わされて出会ったことで、人生が大きく変わったふたりの少年。その半生を通して、そも小説とはなにかを語る。作者の創作論、というよりは読者をも巻き込みんだ読書論、それらを全部ひっくるめた「小説」論と言うべきか。創作、評論、すべての書くこと、読むこと、ひいては生きることに通じる。読んでいる最中はこれほど明快な結論が導き出されるとは思わなかった。作者の作風を知っていれば一貫していることはわかるはず。良い小説でした。