宮内悠介 『暗号の子』 (文藝春秋)

わたし自身、ウェブを覆う野蛮には思うところがある。スマートフォンを使い、常時ウェブを使うわたしにとって、SNSはいわばライフラインだ。

けれどその水道には、沈鬱な黒い毒が流れている。

「暗号の子」「偽の過去、偽の未来」「ローパス・フィルター」「明晰夢」「すべての記憶を燃やせ」「最後の共有地」「行かなかった旅の記憶」「ペイル・ブルー・ドット」。SNS、暗号通貨、VR、AI。「現在」のテクノロジーその他を扱った八編を収録した短編集。基本的にはテック小説中心なんだけど、人間を見る眼の、手つきというか細やかさがとても心地よい。SNSに静穏と理性を取り戻したフィルターアプリが人を殺す、「ローパス・フィルター」。ある大人から見た宇宙開発の現在と、未来への希望を描く「ペイル・ブルー・ドット」。管理者も責任主体もない分散型自律組織が社会へ及ぼした影響を描いた表題作「暗号の子」の三編が特に良かった。2025年が迫った今こそ読むべき・読まれるべき短編集だと思います。