日日日 『狂乱家族日記 参さつめ』 (ファミ通文庫)

狂乱家族日記 参さつめ (ファミ通文庫)

狂乱家族日記 参さつめ (ファミ通文庫)

傑作.凶華の感情の推移とかなにか肝心な部分がすっぽり抜け落ちたまま話が進むのは相変わらずでたぶんひとを選ぶことも変わっていないんだけど,それでも間違いなく傑作.
トーリー自体はラノベの作法に則った至極真っ当なものだと思う.それを傑作たらしめているのは,日日日の駆使するポップで小気味良いテキスト.テキストに踊らされる,物語に酔うって感じかしら.読んでいくうちにいつの間にかあるリズムに乗せられて,自然に感情移入し,いつの間にか笑わされて,自然に泣かされるという.文章が実にすんなりと,頭に浸透してくる感覚.こういう読書体験は久しぶりだ.日日日のこのテキスト遣いはほかの作品でも目立っていた長所だけど,この作品で極まった印象.好みは割れるかもしれないけど,紛れもなく傑作.
ネコミミが生えている理由は説明されたけど,それがネコミミである必然性がぜんぜんないのはまあ大人の汚い策略ってやつかね.