長谷敏司 『幼なじみ嫁のやり直し恋愛ルート』 (スニーカー文庫)

多方向から思考が交錯する。まとめると、だいたい、「おまえがカスだからこうなった」になる。

今さら、事態の深刻さに、冷や汗どばどば出てきた。動悸が止まんないわ。

“十年後の未来のわたし”に逆行転生されてた間は、気づかなかった。

私って、断罪されて当然の、悪役ヒロインとか、そういうポジションの女では?

お隣同士に住む幼なじみの藤野悠地と星宮結夢。昔は仲が良かったふたりも、高校生にもなると挨拶も交わさない仲になっていた。ある日のこと、悠地は結夢から突然告げられる。「10年後から逆行転生したあなたのお嫁さんです」と。

このままでは10年後に死んでしまうという「死の未来」から逆行してきた、未来のお嫁さんとの学園ラブコメ。いくらかSF要素もあるけど、ほぼ純粋な学園ラブコメと言えるかな。絶対に嘘をつかない少年と、嘘ばかりつく少女の幼なじみ関係だったり、転校生を含めた学園内のパワーバランスの変化だったり、「学園」ラブコメだからこそできることをやっているという印象を受けた。キャラクターの個性や理の通し方も非常にうまく、筆が乗っているように見えた。端的に言って小説が上手い。SF大賞作家が初めて挑戦した直球ラブコメを皆も読むといい。



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倉田和算 『砂上メイド戦艦喫茶あぽかりぷちゅへようこそ2』 (電撃文庫)

「この世界じゃなにかを奪わなきゃ生きてけない。でも、奪うだけでも生きてけない。祈りだけじゃ腹は膨れない。でも、祈ってないと人は壊れる」

パナシェは乾パンを半分にちぎると、大きなほうを皿に戻し、小さなほうを口に入れた。

「それなら両方やるしかない、でしょ?」

降り注ぐ砂に埋もれて、ポストアポカリプスと化した日本。メイドカフェ「あぽかりぷちゅ」は修道女海賊(シスターパイレーツ)を名乗る一団をお迎えする。シスターパイレーツの船長パナシェは、あぽかりぷちゅのセグメとハゴロモを海賊団に誘い入れようと画策する。

ポストアポカリプスの砂上メイド喫茶運営日誌、第二巻。ポストアポカリプスで社会が機能しなくなった世界では、自分の意志が自分の人生に反映できるとは限らない。拾われる相手がメイドだったか海賊だったかそれ以外かで、否応なしに人生が大きく変わってしまう。そんな世界で君たちはどう生きるか、みたいな話だと思う。ポップでライトな印象だけど、砂に沈んだ世界のリアリティを要所要所にしっかり描いていて、それでいて前向きさを失わない。良い小説だと思います。

法条遥 『ノンブル・シャッフル』 (ハヤカワ文庫JA)

「そう、編集者だ! 編集者こそが、この仕事にふさわしい! 何故なら君らは『それ』が仕事だからだ。物語を編んで、集めるから、編集者! ならば頼む! 日本国首相として君たち編集者に依頼する!」

さあ、という感じで、首相が編集者に手を差し出し、逆の手で登場人物たちを誘う形になった。

「彼らを元の時代に戻すために――、編集者たちよ! 彼ら自身の物語を、彼らに納得させるのだ!」

大声で啖呵を切った首相だったが、

反応した編集者は、誰一人いなかった。

日本国首相からの密命により、秘密裏に1000人を超える編集者が集められた。彼ら彼女らに与えられた使命は、日本のあちこちに蘇った昔話の主人公たちに、それぞれの使命を思い出させ、物語の世界へ戻すこと。

編集者、政治家秘書、国語教師、司書の四人の女性に与えられたミッションは、桃太郎、かぐや姫、シンデレラ、斧の泉の女神に、自身の物語のプロットを理解させること。失敗は世界の滅亡へと繋がる。編集者小説の一種、という理解でいいんだろうか? 「プロット」というものを四人それぞれの方法で、登場人物そのひとに理解させようと四苦八苦する様、そこから生まれる「物語」理解のヘンテコさが楽しい。あらすじの時点で変な小説なのはわかっていたけど、その印象よりもさらに一歩分、変な小説でした。

てにをは 『また殺されてしまったのですね、探偵様 7』 (MF文庫J)

うん。これからはそういうのもいいんじゃないだろうか。

よし、またころ学園編突入だ!

上機嫌で花瓶を手に取ったその瞬間、凄まじい音と衝撃が俺を襲った。

一瞬にして俺の肋骨は粉砕された。それから左右の鼓膜と肺が破れた。

鴉骸木一族の事件から一ヶ月。事後処理とメディア対応を終えてようやく時間ができた朔也は久々に登校した高校で爆殺される。

本当に今さらの学園編? と思ったら爆発で終了。ショッピングモールのおかしなメッセージから起こる事件に、男子生徒が次々に退学に追い込まれる元女子校への潜入捜査。ストーリー的には幕間になるんだろうけど、築き上げた話の流れやシリーズのお約束がしっかり感じられて、連載ミステリとしてもキャラクター小説としても貫禄が出てきた。よかったと思います。

東崎惟子 『探偵 透見夏芽ならば。―雪零館の殺人―』 (電撃文庫)

彼女が太陽ならば、私は月影。

――なるしかあるまい。「令和のジェームズ・モリアーティ」に。

高校生、透見夏芽は「令和のホームズ」と呼ばれる名探偵。青春らしさを求める彼女は、助手の片霧小夜とともに高校のミステリ研究部に入部し、部活の合宿に参加する。数々のミステリのコンセプトルームで埋め尽くされたミステリマニア向けホテル「雪零館」で事件が起こる。

ミステリ研の集う雪の山荘で惨劇が起こる。作者が平成ミステリドラマのファンと言うことで、いい意味でキャッチーで興味を引くシーンが多い気がした。なにせ始まって早々、ネタバレできないシーンが入るからね。情報も整理されていて非常に読みやすいし、そのうえでしっかりと驚かされる。ミステリ初心者にもおすすめしやすい一冊だと思う。楽しかったです。