三船いずれ 『ガチ勢を募集した無名冒険者、なぜかガチ恋勢(最強)が集結して覇権を獲る』 (MF文庫J)

本当なら別の可能性だってあったかもしれないのに、時代が価値あるものとして認めなければ、その選択肢はいとも容易く切り捨てられる。

そうして生まれた「選択肢が奪われた世界」がもたらすものとは。

世は冒険者至上主義――実力よりも人気が重視され、冒険者が冒険しなくなった時代。地位や名誉に一切の興味がない冒険者センは、ダンジョン攻略のためにパーティーメンバーを探していた。ダンジョン攻略にガチなメンバーを新聞広告で募集したところ、色々な勘違いからセンにガチ恋するメンバーが集まってしまう。

冒険をしない冒険者がもてはやされる、いびつな「冒険者至上主義」の時代。ソロで冒険を続ける変わり者の冒険者。この時代の空気はどのようにもたらされたのか。SNSとアテンションエコノミーの時代に訴えかけるような、価値観の転変を切り取ったファンタジー。タイトルと前半の流れからディストピア小説になるのは想像できなかった。人々と社会から失われた/残っている熱というテーマがわかるまでが正直長い(前半の勘違いラブコメがずっと続くのかと思った)のだけど、自分の好きなタイプの小説だった。いくつかの謎が残されたままなので、続きが出ること期待しています。デビューから一貫してクォリティの高い作品を描いている作者なのでもっと読まれてほしいな。



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神宮寺文鷹 『孤高の電波美少女と恋で繋がったらギガ重い2』 (電撃文庫)

「その“ガーディアン”、見覚えがあるわね。本当にもう、忘れられないくらいに」

「そりゃそうでしょ――だって、アナタのカレシだもの」

雲雀と正式に付き合うことになった将臣は、悪友啓示が生徒会を志したことから生徒会と縁が生まれる。そんな彼に“精神界”(アストラルサイド)を知っているという副会長、佐伯奏がグイグイと接近する。同じ“精神界”(アストラルサイド)を知る者同士、雲雀と奏が友達になれるかもしれないと考えた将臣は、奏の真意を知ろうとするが。

重い彼女たちとの、世界をまたいだ電波な恋物語、第二巻。一巻同様、病院や個人情報の扱いの軽さが気になるけど、「ふたつの世界」を活かした、ベタなラブコメらしい話作りはよかったと思う。次は“精神界”(アストラルサイド)の成り立ちに触れることになるのかな。ひとまず最後まで追いかけたいと思います。



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魚里 『新編古典恋心中』 (電撃文庫)

「これはね、心中のお供を増やしてるんだよ」

その言葉に感じた寒気を、逢見はいまだに忘れられないでいる。

高校生の道徳逢見は、とある縁と恩から朱古典を蒐集する名家の当主、一年先輩の花香しのねと知り合い、家事手伝いとして雇われることになる。古典の名を冠し、所有者に異能と呪いを与える呪物、朱古典。しのねの母がばらまいた朱古典を、ふたりは協力して集めることになる。

第32回電撃小説大賞大賞&支倉凍砂賞受賞作。古典部にジョジョをかけ合わせたような、古典解釈・青春・異能バトル小説。【七生滅敵】、【撰集抄】、【群書類従】、【曾根崎心中】といった古典にちなんだ異能力の探り合いはスタンドバトルのようであり、マイルドヤンキーな逢見と、引きこもりで人見知りでぼくっ娘しのねとのやり取りは古典部のようであった。意図的かわからなかったんだけど、戦う相手が妙に小物くさい(よく言えば人間くさい)のが印象に残る。解説で言われている通りの、起承転結のしっかりしたエンターテイメントだったと思います。

神代翁 『いけにえの君主論』 (電撃文庫)

「結末にしか善が生じないと言うなら、この世にはきっと、善なんてありません。誰も未来を見通せないのだから、己の成したことが何になるかなど分かるはずがない。それはきっと当然のことなんです。良いことをしようとした――不確実性の中にある光、それこそが、善なのです。産まれも、生き方も関係がない。絶対の摂理として、私はそう信じる」

もし、そうでないと言うならば、この世とは何なのですか。神様。

私はほとほとあなたが嫌いになってきました。

飢えと暑さと疫病で滅んだ亡国の王女シルビアは、悪竜ヴェールに生贄として捧げられる。だが、竜は彼女を喰らわず、代わりに世界を見せる旅へといざなう。彼女を美味しく喰らうために。

竜と姫は世界を知る旅に出る。第32回電撃小説大賞銀賞受賞作。ふたりの視点から、それぞれの人生とそれぞれの目に写った世界を描いてゆく。やりたいことを全部詰め込んだと思われる、非常に熱量の高いファンタジー。

作者自身があとがきで述べているように、粗さもまたかなりのものではある。シーン単体はともかくシーンごとのつながりはスムースではなかったかな、とか。そういう意味では好みは割れそうな小説ではあった。自分も、特に前半は苦手なタイプの小説だったのだけど、尻上がりに熱が上がっていくのが感じ取れて楽しかった。最後まで読む価値がある小説だったと思います。

かつび圭尚 『きみにナイショの七角計画』 (MF文庫J)

ああそっか。ここまでしなくちゃいけないんだ。

誰かを人生ごと救いたいって想うのなら、そのくらい自分を捧げないと駄目なんだ。

だとしたら……思ったよりも簡単じゃん。

嫌われるかもしれないなんて、なんにも怖がる必要なかった。

だって恋は信仰だから。

自分は絶対に恋なんてしない。その決意とともに進学した高校生、天宮司は、その日のうちにクラスメイトの春野晴乃に一目惚れした。司は晴乃を嫌いになるために行動を始める。だって、恋とは失敗だから。

七人分の「恋とは◯◯だ」から始まる、群像学園ラブコメ。駆け抜けるようなテンションで片思いと片思いが連鎖するドタバタスラップスティック。七人の高校生たちの強い個性と、それぞれの恋愛観がすれ違いぶつかり合い。本当に楽しかったです。もっと読まれてほしい、傑作青春小説であり傑作ラブコメでした。