内山靖二郎 『神様のおきにいり』 (MF文庫J)

神様のおきにいり (MF文庫J)

神様のおきにいり (MF文庫J)

新人賞受賞作ということだけど,リーダビリティは高く内容もよくまとめられている.しかし正直なところ無難にまとまりすぎて面白味があまり無い.新人らしからぬ落ち着いた雰囲気がある,といえば聞こえはいいかも知らんのだけど,つーかデビュー作のはずなのにシリーズものの4〜5巻あたりのマターリした空気を醸し出しているのはどういうこっちゃ.
例えば「家神」とか「桜の精」といったものを,くどい説明無しに違和感無くお話に溶け込ませることに成功しているなど,技術があることに間違いは無い.ただ,市場をリサーチして売れ線を見極めた上でラインナップを揃えました,的なあざとさをちょっと感じてしまって,そこに引っかかるものがあった.
いや本来はけちをつけるようなことではないんだけど,違和感無く飲み込めたこと自体に違和感を感じてしまったもので.主人公の影が終始薄いことを除けば決して嫌いな話じゃないし,老け幼女(もっと適切な用語があった気がするが思い出せない……)の珠枝も可愛いと思う.続きが出れば買うです.
しかし同じ賞を受賞した『悠久展望台のカイ』とは色んな意味で対照的な作品ですね.それぞれに雰囲気があって私はどちらも良いと思う.他社のを全部読んでいるわけではないけれど,なんとなく,MF文庫Jの新人賞はレベルが高いのかなという気がする.