誼阿古 『クレイジーフラミンゴの秋』 (GA文庫)

クレイジーフラミンゴの秋 (GA文庫)

クレイジーフラミンゴの秋 (GA文庫)

『クレイジーカンガルーの夏』の主人公・広樹の同級生の女の子・晴を主人公に据えたスピンオフ.ということで舞台は1979年,女子中学生の一人称で語られる.
で,酔った.読み物酔いっつーのかね,これ.
物語のもうひとりの主人公とも言えるイカサマこと原田先生や,晴の両親に素直に共感できる部分もあり,それでいて晴から見た大人たちへの冷めた感情や鋭い視線にも共感できる側面もある.大人の視点と少女の視点,どちらに肩入れしたとしても物語を読むには差し支えない構造になっている.……その筈なのだけど,読者として腰を据えるべき位置が決められず,読みながら視点が揺れまくり,まるで乗り物酔いしたかのように気持ち悪くなった.大人から子どもへ向けられる感情と,子どもから大人へ向けられる感情,それらへの共感と唾棄したくなる苛立ち.両者への感情移入は容易なのに,感情移入しきれないもやもやがあった.
『クレイジーカンガルーの夏』もそうだったけど,単純にノスタルジーでは括れない,ごたまぜの感情に襲われた.子ども同士の対立軸,即ち教室内のコミュニティや力関係も丁寧に描かれている.愛情さえ感じた.ビートルズYMO といった小道具(巻末に楽曲リストあり)は,個人的(世代的?)にやっぱりピンと来なかったものの,物語との絡め方は数段上達していた.楽曲に思い入れのあるひとならいっそう楽しめると思う.
……以上,訳の分からない感想文になったかも.まあいつものことか.色んなひとに読んで欲しい,というより,色んなひとの感想を聞いてみたいと思えるような,そんな読書体験でした.