霜島ケイ 『カラクリ荘の異人たち 〜もしくは賽河原町奇談〜』 (GA文庫)

カラクリ荘の異人たち?もしくは賽河原町奇談? (GA文庫 し 3-1)

カラクリ荘の異人たち?もしくは賽河原町奇談? (GA文庫 し 3-1)

人間の住む「こちら」と妖怪たちの住む「あちら」,その境界にある空栗荘を舞台としたハートフルなファンタジー.感情に乏しく他人との関わりを避けたがる太一の成長を優しく描きあげる.
面白かった.人間と妖怪との共存というテーマがまず好み.似たテーマの作品として「もっけ」や「神様のおきにいり」あたりがすぐに思いついた.違いとして感じたのは,共存の厳しさ・難しさを描くことは忘れず,それでいて隣人の優しさのほうをより強く打ち出している点.不思議な町とそこに住む住人たちはあくまで優しく,あくまでまったり.上記2作品ではあった,油断すると喰われる・憑かれるといった緊張感はあまり無い.目指すところが違うとはいえ,雰囲気が大きく変わってくるのは面白い.
丁寧な描写でしっとり読めるのでテーマに惹かれるものがあれば読んでみて損なし.続きが出るなら追いかけたいタイトルがまたひとつ増えた.