あきさかあさひ 『渚のロブスター少女』 (ファミ通文庫)

ツインテールでブラコンの中学生のひと夏の成長物語.第 6 回えんため大賞優秀賞受賞作にしてあきさかあさひのデビュー作.大学院を卒業する少し前に大学前の書店で買い二度の引越しを共にしたというだけで無駄に思い入れのある一冊.思い入れを溜めつつ丸三年積んでいたわけですが.
不器用なりに妹を気遣う兄に,賢いイルカのククーラ,友人のゆーみと,ヒロインみおを取り巻くそれぞれのエピソードにそれぞれのストレートな優しさが溢れている.「上手い」という感じはないんだけど,愚直で実直な優しさがあるというか,むしろ不器用な人間関係がしみじみと伝わってきて良かったというか.カナヅチを克服し成長を描いたクライマックスもこれでもかとばかりに力強さが出ており良かった.それだけにストーリーラインがどことなくぎこちないことがちょっと勿体無い.話を進行させるためだけに出てきたような,強引かつあまりにくだらない黒幕もいただけない.パーツは凄く良いのに,並べ立てただけで接続がスムースでない,といった印象.まあ次回作の『終わる世界、終わらない夏休み』では克服されていたようだからこれはこれでもいいのかもしれないけどね.