穂史賀雅也 『オウガにズームUP!』 (MF文庫J)

オウガにズームUP! (MF文庫J)

オウガにズームUP! (MF文庫J)

少子化の影響で今年から共学になった秋島学園.男だらけの暗黒時代にようやくピリオドが打てるかもと騒ぐクラスメートの野郎どもの中,犬伏ユージは周囲には言えない秘密を抱え悶々としていた.
暗闇にヤギを探して』の穂史賀雅也の第二シリーズは少々風変わりな学園ラブコメ.主人公ユージの一歩引いた,どこか冷めた立ち位置から谷川流の一連の作品を思い出した.「ボクのセカイをまもるヒト」とか「絶望系」のような,メタを交えた視点で萌え的なあれこれをパーツを組むように配置しました,みたいな露悪的な何かを含んでいる.生徒紹介代わりに載せられた女子名簿(プロフィール付き見開き 2 ページ)にイラスト入りのアンケートはがき(「次巻でとくに出席を希望する生徒にをつけてください(何人でも可)」)が露悪の極みかね.作中にまだ*1出てこないキャラの顔イラストを並べられても同じにしか見えないっつの.露悪というより意地悪?
という風に記号的でありながらキャラクターの魅力は損なわれていないのは不思議.ユージの「嫁」になった井上ククルの,表情に表れない想いや不器用な行動はやたらと可愛らしい.ここぞというときに繰り出される,冷めていながらしっとりとしたテキストも静かに効果的に心に響く.

ククルはユージに向かって両手を伸ばした。
「おんぶ」
「おんぶ?」
「お前の家までおんぶしてくれ」
「なんでだよ。理由を二十五文字程度で述べろ」
「月がとても綺麗なので、より高い位置で月を見たい」
ユージは指折り数えて文字数を確認した。二十三文字。完璧な解答だ。
ええい、毒を食らわば皿までだ。今日は、ククルの言うことに従うことにしよう。
「わかったよ」
「わかればよろしい」

オウガにズームUP! (MF文庫J) - はてなキーワード

どっち方面に転がっていくのか現時点ではさっぱり見えないのだけど,こんなもの読んだら期待せざるを得ないじゃないすか.

*1:ひょっとしたらずっと