桃江メロン 『表参道 EXIT A4』 (ランダムハウス講談社)

表参道 EXIT A4

表参道 EXIT A4

ナツミは 35 歳の独身女.コロンビア大学大学院で映画制作を学び帰国したものの脚本は売れず仕事もなく,ときおり業界人の集まりに顔を出しながら仕方なく家庭教師をして食いつなぐ日々を送っていた.ある日のパーティでナツミは,ちょっと気になるフレンチ・ビーグルのようなフランス人のピアニストと出会う.
第 2 回ランダムハウス講談社新人優秀賞受賞のデビュー作.フレンチ・ビーグルと会ったことで思い起こされる,日本での学生時代から留学中までの男たちとの出会いの遍歴と,その後のお話.うまくいかなかった過去〜現在の恋愛話が語られる前半部はわりと鬱屈してひねた感じ.恋愛って面倒くせええぇというのが実感として伝わってくる.打って変わって後半部では,3 年ぶりのセックスを経てフレンチ・ビーグルへの想いが一直線に.冷め切った前半を完全に忘れ去った,35 歳のまっしぐらな情熱とか乙女のようなうだうだが超 UZEEEE! 女性の一人称口語のモノローグも上手くてうざさも一倍.前半で真面目に読んでいた自分がだんだん馬鹿らしく思えてくる.もちろんそういう効果を狙って書いたものだろうし良かったんだけどね.他人の恋愛ほどくだらないものはない,自分さえ良ければそれがなにより,という教訓をひしと受け取りましたとさ.