熊谷雅人 『ネクラ少女は黒魔法で恋をする』 (MF文庫J)

ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J)

ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J)

面白かった.帯やチラシのコピーは「超内弁慶」「地味で内気」だったんでまあそんなもんかなと読んでみたらとんでもねぇ.「ネクラ少女」はほんとにネクラ少女だった.看板に偽りなし.被害妄想,加害妄想,自虐に傲慢.モノローグ的に綴られる内心が非常に気持ち悪くて実に良い.経験者は語る,みたいな気持ち悪さ.恵まれない青春時代だったのかなぁこの作者,とか思いを馳せながら我が身を顧みて遠い目をした.こういう作品こそリアル・フィクションと呼ぶべきじゃないかしら.
キャラクターの使い方,配置の仕方も,オーソドックスだけど考えられていて上手い.特に台詞を吐かせるタイミング.しょうもない姉を叱る妹なんて,ベタの極みだけど染みた.
トーリーラインは平凡な寓話チックで先が読めること,主人公の惚れた先輩がなんか没個性であることとか欠点もあるけどさして気になるレベルでもなし.良かった.


それにしてもこのレーベルの新人賞受賞作はみんなレベル高いね.