長谷敏司 『天になき星々の群れ フリーダの世界』 (スニーカー文庫)

すごく面白かった.しかしえれぇ読みにくかった.
読みにくさの種類としては,同じ作者の過去の作品だから当然だけど,「円環少女」を更に難解にした感じと言えばわかるかしら.たまに前後の流れを見失った.台詞も誰のものかわからなくなることは数知れず.説明がくどくなりすぎないという意味では好みの文体なんだけど,時間はかかった.これさえ先に読んでおけば,各所で読みにくい読みにくいと評判の「円環少女」がすらすら読めるようになるよ ('(゚∀゚∩! いや本当に.面白い感覚だよ.
「海賊」に追い立てられ,地下に逃亡する羽目になりながら戦おうとする100人と,戦うことを良しとしない信念を貫こうとするアリス.この理想と現実とのせめぎ合いっつうのかな,両者の思想が衝突して一旦は崩壊しそうになりながらも,融和していく描写が興味深かった.特にアリスの信念の揺らぎの描き方はかなり秀逸.並みのラノベともデザスターものともまた違った読後感を味わった.ものごとが理想的に運びすぎな感はあったけど,過程は納得出来るものだったと思う.10代前半のヒロインが登場しないためかそっち方面のねちっこい描写が無いのは物足りないような別にどうでもいいような.
読みにくさを我慢してでも読んだ価値はあった.満足.