水口敬文 『ウィッチマズルカ II.つながる思い』 (スニーカー文庫)

「姉」であろうと強迫的な努力で自分を追い込む夏咲,姉に迷惑や心配をかけたくないと努力する未玖.姉妹の対比や擦れ違いの描き方が良かった.お互いを思いやっているのに擦れ違い,一度は孤立しそうになりながら,最終的には周囲の助けを受けて成長を見せてと,王道を貫きながらも非常に丁寧なストーリーテリングには好感が持てた.
ただ,全体的にトーンが重い.つか暗いのには参った.表紙イラストの表情も暗い.友達を作るのが怖いというひなたの姿を併せて見るに,物語の裏テーマとして人間不信があるんじゃないかと勘繰りたくなった.強迫観念や対人恐怖の描き方が,まるで作者の体験かのように,妙にリアルなのに対し,それを乗り越えた先にあるカタルシス(救済,成長)が落ち着くべきところにすっきり,だからそんな風に感じたのだと思う.
そんなわけで,作者の姿勢には好感が持てるし共感できる部分も多いのだけど,作品として現時点で好きかと訊かれると,うーん.
っても今後の展開が気にならないと言えば嘘なので,引き続き追いかけるつもりではいる.できるなら二人には屈託の無い仲良し姉妹になってほしい,と思えるくらいには感情移入していることだし.個人的注文として百合姉妹になるのだけは勘弁.