野村美月 『"文学少女"と穢名の天使《アンジェ》』 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

とにかく琴吹さんが可愛いことに尽きる.心葉に想いを寄せるようになった経緯から,キツく当たってしまう心理,それを悔やんで悩む様子までが手を尽くして丁寧に描かれているのが良かった.極め付けに 204 ページの告白.よくあるツンデレとは一線を画す,というよりここまで丁寧にやられると"ツンデレ"のひと言でくくるのが失礼で申し訳ない気分になるね.素晴らしすぎる.
心葉も,突き刺すように自分を責める心情がこちらに伝わってくるかのような描写でなんとも痛く重苦しい.ミステリチックな謎解きもいいけれど,2人の心理描写の絡みが今回は光っていたと思う.そして対照的な位置に居るのが,何を考えているのか分からない遠子先輩.3巻までは遠子先輩のポジションをいまいち図りかねてたんだけど,破天荒なトリックスターというよりは,手がかかるけど優しく守ってくれるお姉さん的なポジションにいると見るのが正しかったのかな.
まあとにかく凄ぇ面白かった.シリーズでは今回が個人的ベスト.ラストを読んだ限りでは次でひとつの転機が来るのだろうか.また凄い引きが来たことだし続きを読まずにいられようかと.楽しみに待つですよ.それぞれに救いの光は示されつつあるようだし,全員が幸福になれる結末が来ることを祈らずにはいられない.