周防ツカサ 『ラキアII』 (電撃文庫)

ラキア〈2〉 (電撃文庫)

ラキア〈2〉 (電撃文庫)

金曜日の夜、名村は急にエロ本が欲しくなった。衝動的に購入意欲が湧いてきたのだ。男にはどうしてもエロ本を買わなければならないときがある。名村とて例外ではない。

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こんなテキストから始まるボーイミーツガール.このあと4ページほどかけてエロ本に関する傾向と対策が語られてます.いやー,妙にこの部分に共感出来てしまった自分がいてなぁ.掴みで持ってかれたわけですよ.
1巻の時間ループに対して,2巻で使われる小道具は時間遡行.男子女子の爽やかな青春ものにプラスして,「フリップ世界」の恐怖が上手いこと効いていて面白かった.派手なことはぜんぜん起こらないなかで,ラストに至っても解決しない事項(ex. 桐沢と松川の関係)の存在がやけにリアリティを持っていて良かったと思う.多世界解釈の講釈があったり,覚醒睡眠といった専門用語は多発されるようになり,SF ぽいことがやりたいのかとも思ったけど,内容的にはむしろ恋愛もののにおいが強くなって間口が広がった印象.
1巻で語られなかったこの現象の説明については,プロローグ・エピローグで何者かの存在をほのめかしたり,現象の解釈を試みたりはしてるんだけど,とってつけたかのようで据わりが悪い.むしろ煙に巻かれた感じ.そのへん作者に説明する気があるんだか無いんだか分からんけど,テーマを生かしたうえでの確かな描写力は持っていると感じたので続きが出るなら読むよ.