万城目学 『鴨川ホルモー』 (産業編集センター)

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

京都を舞台に巻き起こる京大生たちの一風変わった青春グラフィティ.これは楽しい.くどいけどしつこくはない文章が,アクの強い京大青竜会の面々とぴったりマッチしていて読む手が止められなかった.特に主人公安倍・高村・楠木・スガ氏と一癖ありすぎるキャラクターがいちいち面白すぎる.「吉田代替りの儀」など,どこかずれた青春イベントの数々も,変化球のようでいて良い意味でお約束を外していない.げらげら笑わされつつも,どこかしんみりしてしまう,みたいな.すごく爽やかな読後感.
その代わりに後半,話の重心が「ホルモー」の説明に移ってからは平凡な描写が増えたのがちょっと勿体無かったかな.これだけ人物が描けるなら,タイトルの「鴨川ホルモー」は最小限でもよかったんじゃないかなー,という気はした.
過去のボイルドエッグズ新人賞を鑑みるに,これもラノベとのボーダーにあるのかもしれないけど,一歩突き出た感.本屋大賞6位は伊達じゃなかった.広くお薦めしたい一冊.
言及しているひとが多かったりキーワードから連想するものが実際あったのだけど,私は森見登美彦は今んとこ短編1話しか読んでないので取り立てて先入観は無く読んだはず.そういう前提で今日の感想はひとつよろしく.