海猫沢めろん 『零式』 (ハヤカワ文庫JA)

零式 (ハヤカワ文庫JA)

零式 (ハヤカワ文庫JA)

いやー,面白かった.ストーリーは,作者自身があとがきで書いているようなストレートなビルドゥングスロマンを,改変歴史ものとして過剰装飾したような話.この装飾部分,右翼的でムチャクチャでエネルギッシュな世界観も,バカみたいな言葉遊びも大好きだ.私は強くてカッコイイものが大好きだ!
鬱屈や閉塞感を打ち破らんと前進した朔夜と夏月.最期まで後ろを向き続けた忌三.読み終えてみると,前者による爽快感・達成感を得られると同時に,忌三の純情も理解できてしまうだけになんとも切ない気分にもなった.この胸に来る読後感は紛うことなき青春小説のものだよな〜としみじみ.良かった.