ワールドコンには行けそうもないのでウェルズを読んで心を慰める週末.序文で
ボルヘスが述べているとおり,「一つだけ幻想的事実を含ん」だ短編が5編.それぞれのア
イデアそのものは流石に使い古された感は否めないものの,多分に含まれている寓意とそれを表現するテキストのキレにまったく古びた印象は感じられない.表題作
「白壁の緑の扉」の二度と扉の向こうに行けなかったウォーレスと,
「魔法屋」の店から帰ってきた親子.比べるかのように巻頭と巻末に並んでいるのはやっぱり意図あってのことなのかね.この2編が個人的にお気に入り.皮肉に紛れて情緒がたっぷりで切なくも楽しかった.