瑞浪片奈&チームビキニンジャ 『ビキニンジャ♥ドキッ 1』 (ガガガ文庫)

ビキニンジャ・ドキッ 1 (1) (ガガガ文庫 み 4-1)

ビキニンジャ・ドキッ 1 (1) (ガガガ文庫 み 4-1)

修行の末に免許皆伝を得た美姫尼の里の女子中学生忍者・舞岳ゆりか.母親捜しの初忍務のために里を下りて八戸刈家にホームステイすることに.
これは良かった.イカモノっぽい設定でありながら,忍者小説をリスペクトしたうえで作品に取り入れているのが読んでいてよく分かる.奇抜だけど派手すぎない,シノビファイト(現代忍者の決闘方法)における一対一の緊張感もなかなかのもの.バトルロイヤル形式だった最後のバトルはごちゃごちゃして分かりにくかったのが残念ではあったけど.
八戸刈家の 3 人とゆりかの関係の描き方も良い.影が薄いようで存在感を示す父親,争いを嫌いウザいほどゆりかを心配する母親,主人公の佑之介という三者のビキニンジャ*1への三者三様の接し方とその変化が地味ながら上手い.特に佑之介.小学 6 年生男子が中学 2 年生女子を見る微妙で複雑な視点が素敵すぎる.読みながら自然ににやけてしまったよ.
正装がビキニの女子中学生忍者といういかにもな設定も,ゆりかの描写のみならず,忍術設定の補強や一家との関係の糸口など話の骨子として生かされており,ただ単に思いついただけではないことが伝わってきて好感が持てる.随所でのゆりかのビキニ(身体)の描写も,健康的な色気という感想がエロとか萌えより先に自然に浮かぶようなもので,新鮮かつ爽やかかつなかなか強烈.
タイトル,作者名,基本設定と各方面から避けられそうな要素がぷんぷんだけど中身は間違いなく骨太.一見安直な設定もよく考え抜かれており高いレベルでまとまっていた.誰にでも,ってわけじゃないけどラノベが普通に好きなひとなら良い意味で期待を裏切ってくれると思うよ? すげー面白かったです.

*1:そういや作中では一回も「くノ一」という言葉が出てこなかったような……