小林めぐみ 『片手間ヒロイズム』 (一迅社文庫)

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)

地球を救うためにインドに行きます.突拍子もない伝言を残し夫・正義と息子・えーちゃんを置いて失踪した千絵.千絵の従妹・真理は一歳のえーちゃんのベビーシッターとして密かに想う正義のそばで甲斐甲斐しく働く.そんな真理の周囲で起こる奇妙な現象とその顛末.
女子高生の一人称で語られるスコシフシギ現象の数々は『食卓にビールを』を彷彿とさせる.というか前半のノリはわりとそのまんま.でも続編じゃないよ,ぜんぜん違うよ.ヒロインは人妻じゃないし作家でもない,恋に恋する普通の女子高生ですよ.些細と言われりゃそのとおりだけど,乙女的な意味で不安定に心揺れる真理はコミカルで楽しい.彼女は主婦が失ったものを持っている.しかし露骨に話題に出るとは流石に予想出来なかった.後半の詰め込み気味かつスピード過剰で煙に巻くような話運びも悪くなかったと思う.正直分かりやすくないし前半との繋がりが薄いのが難だけど勇者と魔王と予言者というネタは好きなのさ.
小林めぐみ×結城心一! てことでちょう期待していた一冊.難解*1なネタの数々をタスクを消化するように淡々とこなしつつ独自色を出す作風は共通しているかもしれない.「ももえサイズ」は上級者向けかもですが傑作なので読んでない諸兄は読みやがるといいですよ.

*1:ベクトルが違うけど