岡崎裕信 『フレイアになりたい』 (スーパーダッシュ文庫)

殺人狂の女教師に右腕と右脚を奪われた瞳.自分の命を救うために大きな代償を払うことになった親友の若菜を助けるため,フレイアと呼ばれる「神格」を求める.学園少女異能.
まず異能力ありきで細かい理屈はあえて考えず,勢いと雰囲気でぐいぐいと押し進めるストーリーテリング.最近めっきり聞かなくなった新伝綺の雰囲気をどこかまとっているような.いちいち花をあしらったイラストも話に変な華と勢いを添えていた気がする.このへんは一種独特な雰囲気があって悪くない.ストーリーそのものは,「神格能力」の扱われ方が気になったかなあ.部分部分で見ると気にならないんだけど,全体を通してみると異能力が誰にとっても枷としてしか作用していないように見える.水泳部員の扱いに代表されるように,誰が持ったところで結局は誰の役にも立たない力.軽い熱血ノリと前向きなストーリーの裏側で,「いいも悪いもリモコン次第」にはならずに,リモコンを手にした時点で選択肢は失われる,みたいな見えない閉塞感が漂っていたような.穿った見方をしているんだろうなあ,とは自分でも思う.