鈴木一二三 『海賊彼女』 (スーパーダッシュ文庫)

海賊彼女 (集英社スーパーダッシュ文庫)

海賊彼女 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ドキュメンタリー番組制作に憧れ,親の反対を押し切って TV 制作会社に入ったバイク・カートライトだったが,現実に待っているのは一生懸命書いた企画も上司に握りつぶされ,アダルト番組を制作する日々.そんな折,上司の尻ぬぐいのため,女だけの宇宙海賊の取材をすることになったカートライト.念願のドキュメンタリーを撮れることに意気あがる彼だったが.
地球〜木星圏を舞台にした宇宙海賊もの.これは面白かった.宇宙海賊に密着取材するうちに徐々に明らかになっていく真実,というストーリーラインはお約束.宇宙での生活やら地球と木星をめぐるイザコザなど,「宇宙海賊」のパーツをひとつひとつ丁寧に解説するように描いており,職業体験ツアー小説のような趣がある.ライトノベルとしてはあまり例のないような深いところまで踏み込んで,なおかつ読者を煽るような描き方をしているため生理的な嫌悪感もいくばくかあったけどそれも含めて良かったと思う.宇宙 SF 入門編としてもいいんじゃないでしょうか.責任は持たないけどね.
読み終えてから感想をいくつか読んでみたんだけど神楽坂嫌われすぎでワロタ.いやものすごく分かるんだけど,最初から最後まで自分を貫き通した彼奴の姿勢は漢らしすぎて手放しに嫌うことも出来なかった.変な日本語.むしろ浅慮で下調べの足りない主人公の方に腹が立ったのは私だけですか.神楽坂はもっと浅慮で(中略)と言われりゃもちろんそうなんですけどね.