アーサー・C・クラーク/山高昭・他訳 『明日にとどく』 (ハヤカワ文庫SF)

明日にとどく (ハヤカワ文庫SF)

明日にとどく (ハヤカワ文庫SF)

クラークの第二短編集.収録作は 1946 年から 1953 年にかけて発表されたものなので時期的には第一短編集『前哨』と同時期なはずなのだけど,こちらのほうがユーモアを含んだ短編が多く,より読みやすかった.以下,特に印象の強かったもの.

『太陽系最後の日』

発表当時の読者人気投票で一位を獲得した短編.滅びに瀕した未来の地球描写がいま読むと少し冗長に感じる.のちの SF の基本となるものほぼすべてが詰め込まれているからこそそう感じてしまうんだろうけどね.ラストも今となっては新しいものではないけど,こちらはいつまでも変わらない.すごく素敵に映る.

『忘れられていた敵』

宇宙塵帯に太陽を遮られ氷河期に入った地球の様子を生活レベルで描いた掌編.たった 10 ページしかないのに冬のロンドンへの想像力とビジュアルイメージが掻き立てられる.

『地中の火』

地球の地下深くに国が存在した! これぞセンスオブワンダーよなあ.

『親善使節』

地球との親善のために二人の宇宙人が送り込まれたのはイギリスの片田舎の村だった.英語を学んできたはずなのに話は通じない,警官はやってくる,はては狂人扱い.舞台喜劇のようなテンポの良さと分かりやすいブラックユーモアが楽しい.