鷹羽知 『紅はくれなゐ』 (電撃文庫)

紅はくれなゐ (電撃文庫)

紅はくれなゐ (電撃文庫)

活況を見せる遊郭にして武装都市・吉原.華やかな表の顔と,その裏で渦を巻くひとの欲と陰謀とを,ひとりの花魁を中心に描く.
舞台の吉原は吉原遊廓を換骨奪胎して作られた,いわば「どこにもない街」.国人と異人が混在し,独特の華やかさと澱みを抱えた吉原は,日本ではなくオリエントにでもあるのがふさわしいような,異国の風情が強く漂っていた.前半の雰囲気作りは良かったと思う.それだけに後半の話の持って行き方がすごく残念に思えた.「斜め上」と評するひとが多いようなのだけど,むしろ広げた風呂敷をたたみきれず,やむなくライトノベル的な意味での「普通」に持っていったように私には見えたのだけどどうだろう.それらしい伏線もなく唐突に,だからなあ.あと犬槇が不憫すぎてかあいそうだった.
っても 17 歳作家のデビュー作としては上々かな.『Switch』もそうだけど若いひとがどんどん出てくるのは悪いことではないはずだし,今後に期待して見ていきたいと思います.