松原真琴 『猫耳父さん』 (電撃文庫)

猫耳父さん (電撃文庫)

猫耳父さん (電撃文庫)

飼い猫のネーが寿命で死んだ日の翌朝.父さん(38 歳・漫画家)に猫耳としっぽが生えていた.猫耳が生えた父さんと,中学生の娘と,周りのひとたちのお話.表題作のほか,書き下ろし短編の『未来の世界の犬型ロボット』を収録.
作者の名前どっかで見たことあるなあと思って調べてみたら乙一の日記によく名前が出ているひとだった.父と娘の不器用な交流をゆるくハートフルに,かと思いきや後半…….大人の事情がにおうのは仕方ないけど,もう少し上手く軟着陸してほしかったなあ.前半は悪くなかっただけにもったいない.
あとがきで「電撃文庫らしからぬ」とあるのだけれど,主人公が中年だからというより,ガチで不幸な登場人物が出てくるあたりが電撃らしくないいちばんの所以だと思う.「未来の〜」もまた然り.そもそも週刊アスキー連載作で,電撃文庫向けに書いたものではないからなのかな.特定のレーベルしか読まないラノベ読者はどうやら想像しているよりずっと多いらしいことを最近知った私なので,こういった越境(?)作品が増えればもっと色んな方面に手を伸ばすきっかけになっていいのかもなあ,と思ったのでした.甘い考えかな.