紅玉いづき 『ガーデン・ロスト』 (メディアワークス文庫)

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

格好をつけてるわけでも誤魔化しているわけでもなく、真実だったんだろうと思う。
いいなと思った。なにが好きかを考えたこともないくらいのものを、手の中に得られたら、それはまがうことなき幸せだろうと思った。

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お人好しのエカ,ほわほわしたかわいいマル,ボーイッシュなオズ,クールなシバ.女子四人だけで作られた放送部の四季の移ろいとその終わり.
全四章の物語は一章ごとに四人の女子高生それぞれの一人称で描かれる.主に描かれるのは各々の内面の葛藤や苦しみ.恋愛だったり,友人だったり,家族だったり,自分だったり.悩みの種はありきたりなようでとりとめなく,これだといえる正解もない.そんな葛藤を時間の経過に乗せてしんしんと書き付ける.深くつながっているようでそうでもないような,曖昧な四人の「花園」はそんなこととは関係なく必ず終わりを迎える.読み物として楽しいかと訊かれると素直には首肯しかねるけれど,こんな抉るように苦しく描かれた「等身大」は,どのジャンルを見渡してもそうはないんじゃないかな,と.