カミ/高野優訳 『機械探偵クリク・ロボット』 (ハヤカワ・ミステリ)

機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

「心配せずともすぐにわかるよ」刑事の言葉に、博士は答えた。「その前にちょっと失礼して、〈推理バルブ〉の弁を開いて、〈仮説コック〉をひねり、〈思考推進プロペラ〉をまわさせていただこうかの。何、そうすれば刑事さんの知りたいこともすぐにわかるじゃろうて」
そう言いながらも、もちろん手はすでにクリク・ロボットの背中のハンドルをまわし、いくつかのボタンを押している。

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かの偉大なるアルキメデスの直系の子孫,ジュール・アルキメデス博士と,彼の発明したロボット探偵クリク・ロボット.四角い鋼鉄の頭にちょこんとチロリアン・ハットを乗せたクリク・ロボットの前には〈ミステリ〉などというものは存在しないのだ.
1945〜1947 年に発表された,「チャップリンが世界でいちばん偉大なユーモア作家だと讃えた」フランス人作家カミの本邦初紹介作品.とぼけたキャラクターたちと洒落たテキストで肩肘張らず読めるお気楽ミステリ.物語や謎解きより,アルキメデス博士とクリク・ロボットの行くところ敵なしの活躍を素直に楽しめという感じかな.全体にあふれるユーモアもそうだけど,無闇に挟まれるダジャレの量がすごいことになっている.隙あらばダジャレを挟みたがる,どっかのおっさんのようなセンスにもいい意味で脱力させられる.訳者あとがきによると「原文のダジャレは日本語のダジャレに置き換えた」とのこと.訳文も非常に素敵なものだったけど,詳細な解説か訳注付きで読んでみたくなるなあ.楽しゅうございました.