小林泰三 『人造救世主』 (角川ホラー文庫)

人造救世主 (角川ホラー文庫)

人造救世主 (角川ホラー文庫)

「エネルギー物質ってブドウ糖とか?」
ブドウ糖に似ているが、もっと効率のいい物質だ。物質名や化学式は勘弁してくれ」
「わかるわ。極秘なのね」
「いや。ややこしくて覚え切れないんだ」

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謎の組織 MESSIAH.彼らは,人類は超人によって導かれるべきであるという思想のもと,過去の偉人たちの遺伝子を利用したクローンを生み出し,研究を重ねていた.脱走した「ひと桁番号」──能力が発現しなかったため処分される運命にあった初期のクローンたち──のひとりヴォルグは,脱走時に盗んだロンギヌスの槍先を武器に,MESSIAH との戦いを続けていた.
脱走者 vs. 救世主組織を描くダークヒーローもの.あるいは孤独なヴォルグさんと女子大生二人組の珍道中.いやぁ,ひどかった.面白かったけどひどかった.やけに説明的な文章で描かれる,怪人とのしゃっちょこばったバトルや,アーパー女子大生コンビの会話に度々イラッとさせられる.読者をちっとも信用していない.ラストもこれまたひどかった.伏線はきちんと張ってあるのがまた念の入ったひどさというか.ヒーロー物の爽快感を求めると酷い目に遭うと思う.いやじっさい面白かったんだけど,読んで腹を立てるひとがいるのもすんげー分かる.