遠藤徹 『戦争大臣 III 吸血博士(ドクトル・バンピイル)』 (角川ホラー文庫)

戦争大臣 III 吸血博士 (角川ホラー文庫)

戦争大臣 III 吸血博士 (角川ホラー文庫)

翼を折りたたんだ黒い猫が、物憂げに丸くなって乗っている。
「おれたちの復讐の念は食われてしまうのだろうか」
片手を伸ばして若き大臣は、黒い毛皮を撫でる。
「希望とやらいうものに」

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殲滅歴一年.戦争大臣シドに率いられた国家Jは,ついに大国白鯨(モビイ・ディック)への復讐を遂げた.国家Jを裏切り,蟲操りの民と蟻の舞台の女王フレイムを助けた吸血博士ことスナークは,戦争大臣の復讐を止めようとする.
ふたつの世界を超えて,復讐と怨念は昏く燃え.隔月刊行シリーズの完結編.現代の日本と,戦争大臣のいる国家Jの関係が明らかにされる.すとんと落ちて,気持ち悪い余韻を残すラストはまさに「終わりの始まり」を予感させるもの.しかし,「復讐」によって成り立っていた世界に,実は介在するものがいてムニャムニャ,というクライマックスはちと焦点がぼやけていた気がしたのだよな.人間の復讐譚なのか,幻想の物語なのか,どっちなの,と読んでて思った.あっさりと完結してしまった印象も拭えないしなぁ.