地球まるい 『あなたがさっき食べたのは、ボクのお母さんです』

「症状」を書き込む欄のところで、手が止まった。
目の前に、自分以外の誰かが書いたような白い文字が流れてきます。フォントは多分、MS Pゴシックです。などと正直に書いて、受付の女性に渡す勇気がでなかった。「気持ちが不安定になると変なものが見える気がする」と書いておく。

脳内ちゃんねる

KDPで販売されている短編集.共通しているのはちょっとイヤな話,みたいな読み口かな.ベストは巻末の「脳内ちゃんねる」.ビル倒壊の現場を目撃した男.その日から,男の視界を誰ともわからぬ他人のコメントがニコニコ動画のように勝手に流れるようになる,という.かなり不気味なネタのはずなんだけど,巨乳の女医さんを目の前にすると視界が「おっぱい! おっぱい!」の弾幕で埋め尽くされるとか,妙な親しみを感じさせる「コメント」のおかげでのんきで独特なテイストになっていて楽しい.この一編だけのために買う価値はあると思う(99円だし).他には,古い壺から出てきた悪魔がひとつだけ願いを叶えてあげましょうという,星新一へのリスペクトを感じる「願いをかなえる悪魔」など.ところで,表題作「あなたがさっき食べたのは、ボクのお母さんです」に出てくるようなレストランは実在するのかな.純然たるフィクションだと思うんだけど,似た店が絶対にないと言い切れない気もする.