東崎惟子 『少女星間漂流記』 (電撃文庫)

「私達は人間で、地球人だ。獣とは違う」

本能的な暴力衝動に支配されたりはしないと信じている。

「いいえ、人間で、地球人だから、獣なんです」

環境汚染でヒトの住めなくなった地球を離れ、馬車を模した宇宙船が銀河を駆ける。乗っているのは科学者のリドリーと、相棒のワタリの二人の少女。次こそは安住できる星に着けるかな……

死人を生き返らせる神のいる星。無数の図書館からなる星。生命の光に包まれた星。移住できる星を求めて、二人の少女は星間銀河を漂流し続ける。Web連載のショートショートをまとめた短編集。テイストが近いのは「キノの旅」になるのかな。星新一のような毒とキレのある「悪の星」。シンプルなファーストコンタクトもの「鳴の星」。この本の中では珍しい、普通にいい話の「本の星」。このあたりが好み。それらを置いておいて、いちばん読まれてほしいと思ったのはあとがき。

私は永遠に『少女星間漂流記』を書き続けます。最新刊が買われ続ける限り。

やがて人類は滅ぶでしょう。隕石の衝突により昆虫以外の生物が全て滅ぶでしょう。太陽は爆発するでしょう。ビッグクランチが起きて世界が暗黒エネルギーに飲まれて無になるかもしれません。物質はおろか時間という概念すら消え去るでしょう。

それでも私は永遠なのです。『少女星間漂流記』が買われる限りね。

ちょっとでも売れて、作者には永遠に近づいてほしいなあ。



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