紫炎 『まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる4』 (このライトノベルがすごい!文庫)

まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる 4 (このライトノベルがすごい!文庫)

まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる 4 (このライトノベルがすごい!文庫)

如何に母とはいえ、ユウコ王女は四十近くしてなお美しい。まるで二十代のお姉さんのような美人の母の豊満なるバストに顔を圧迫されれば、いくら息子といえども顔を赤くせざるを得なかった。おっぱいを吸っていた頃ならばいざ知らず、思春期の少年に巨大なおっぱいは毒であったのだ。

かつてゲーム仲間だったユウコと再会したカザネたちは,ユウコの息子であるジーク王子の鍛錬を依頼される.その依頼とは,ダンジョンの奥に住まう黒岩竜ジーヴェの討伐だった.

ゲーム風異世界への転生ファンタジー四巻.命の扱いが雑なのは相変わらずだし,ストーリーに抑揚も緊張感もない.というか,あらゆるセンスがいちいちが古いんだよな.読むのに時間はかからないけどストレスが溜まった.

新八角 『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?②』 (電撃文庫)

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(2) (電撃文庫)

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(2) (電撃文庫)

「もう、ヒトの時代なんて終わったんだよ」

「……終わった……?」

「人類史なんていう狂った祭りみたいな時代は終わったんだ。ヒトは自分で穴を掘って、みんなで静かに墓に入った。地上に残っているのは、終わった祭りの残り火を見て、楽しいと思える馬鹿だけだ。そいつらのことなんか、気にしなくていい」

ある夏の暑い夜.世界中の空を覆った大規模オーロラの影響で,東京にも大規模な電磁災害が発生する.アラカワにある食堂,《伽藍堂》にはなぜかスライムが大量発生.

語られるのは200年前の記憶と,2年前の思い出.ポストアポカリプス都市TOKYOを舞台にした百合&飯SFの第二巻.《聖薬》(バングー)を使った(ジーヴァ)の融合の儀式や,ペヨーテを使って人間と機械をつなぐ神経ネットワークといったサイバーパンク味の強い仕掛けからはじまり,百合夫婦のなれそめでしめくくる.テックと宗教にドラッグが合わさって出てくるとサイバーパンク風味が一気に増すなあ.

東京のすみっこという決して広くない舞台に,アダチのジャングルに住むエルフあり,各勢力の縄張り争いあり,白鯨も登場とかなりの密度が詰め込まれている.しかもそのほとんどが伏線として物語に効いている,という.更には一巻にもまして濃厚な,それでいてやりすぎにならない程度の百合成分.てんこ盛りなのにリーダビリティも高いし,本当にきれいにまとまるのが楽しくてたまらない.良いものでした.ぜひとも一巻とあわせて読んでほしい.



kanadai.hatenablog.jp

深見真 『ガールズシンフォニー ~少女交響詩~』 (ファミ通文庫)

ガールズシンフォニー ~少女交響詩~ (ファミ通文庫)

ガールズシンフォニー ~少女交響詩~ (ファミ通文庫)

指揮をするのは好きだった。

でも戦いも争いも諍いも――とにかくひとが傷付くことは嫌いだった。

だからいつの間にか、音楽の指揮も好きではなくなっていた。

なぜならこの世界の音楽は、「力」であるから。

音楽が持つ力をめぐって,「音楽院」と「文明ギルド」が対立を続ける世界,ハルモニア.戦いを嫌う指揮者ベルタ・ワルターは戦火を避け旅を続けていた.路銀が底をつき,行き倒れ寸前になったところをヴィエンナ音楽院の理事長代理に拾わたベルタは,自分が何より嫌っていたコンバット・オーケストラの指揮を執ることになってしまう.

同名ゲームを小説化した百合ハーレム小説.刃牙ネタが唐突に挟まれたり,ガスを操る敵(女の子)の笑い声が「ガスガスガス」だったりと,全体的に激しいB級感が漂う.作者のお約束のひとつである銃器は今回出ないけれど,「音楽院の地下には拷問室があるのだ」と当たり前のように拷問の場面が挟まれるのはさすが.というか,「脚本・世界観設定」担当ということは,原作もこんな感じなんだろうか.ちょっと気になるけど,原作ゲームはリニューアルに向けて長期メンテナンス中のようですね.付録のシリアルコードをよく見たら有効期限が書いてないようなのだけど,オープンしたら使えるのかな.



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岡本タクヤ 『学園者! ~風紀委員と青春泥棒~』 (ガガガ文庫)

学園者! ?風紀委員と青春泥棒? (ガガガ文庫)

学園者! ?風紀委員と青春泥棒? (ガガガ文庫)

たとえば、優しい正論を言うことはできる。励ますことはできる。

この小さな世界の外側には、俺たちがまだ知らない広い世界がある。

高校生活なんて、人生でたった三年間のこと。

人生はまだ続く。その先で、もっと楽しいことがいくらでも待っているはずだ。

――それは、その通りなのだろう。

けれど、彼女は、一度しかないこの季節に何かを手に入れたかったのだ。

そして、それは叶わなかった。

総生徒数三千人を数えるマンモス高校,東天学園.トラブルシューター兼トラブルメーカーと呼ばれる風紀委員に所属する二年生の椎名良士は,帰国子女の新入生,天野美咲に出会う.天野は「最高の青春を過ごすには、どうすればいいですか?」と衒いなくまっすぐに問いかける.

皆の青春を守るため,そして「最高の青春」を見つけるために,風紀委員のコンビは学園を駆け回る.「学園」という舞台の特殊性を掘り下げて,そこで起こることを考えた青春小説になっていると思う.ここには三千人が詰め込まれていて,見える景色は皆違う.三年間しか通えない場所であり,卒業した先輩たちが残していったもの,これから自分が残すものがある.戦場であり楽園でもある.そして誰もが「最高の青春」を見つけられるとは限らない,という残酷さを描く.

刑事小説や探偵小説のフォーマットを使ったと言うだけあって,軽快かつスマートで読みやすいし,椎名と天野の凸凹コンビのやり取りがバディもののようで楽しい.何よりも,空気を読まない,どこまでもまっすぐな天野がかわいい.楽しくて,少ししんみりしてしまう.これぞ「学園モノ全部入りの青春学園物語」,でした.

枯野瑛 『終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ』 (スニーカー文庫)

終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ (角川スニーカー文庫)

終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ (角川スニーカー文庫)

――正規勇者(リーガル・ブレイブ)よ。貴様も、もはや、人と呼べるモノではないのだな。

聖剣セニオリスに認められた正規勇者(リーガル・ブレイブ)の少女,リーリァ・アスプレイ.戦いによって傷んだ聖剣のメンテナンスのため,海に浮かぶ国バゼルフィドルを訪ねる.

その力は人類を救うものであって,人間を救うものではなかった.「終末なにしてますか?」本編よりはるか昔,まだ人類がいた時代に存在した,不器用な勇者の少女の物語.そして,選ばれた者にしか使えない聖剣が世界に誕生した理由と,託された願いを描いたおとぎ話.

物語を背負う者にしかなれないとされる「勇者」にはどこか影がつきまとう.人類と世界を救う運命を負わされ,他にはなにもできないやるせなさがある.それにしても,存在が消滅してからどんどんヴィレムの存在感が強くなっていることよ.意図してやってるんだろうけど,もはやいなくなってからのほうが長いはずなのに,作中で定義される「勇者」の完成形に近づきつつあるという.次は異伝か本編か.お待ちしております.