鶴城東 『クラスメイトが使い魔になりまして3』 (ガガガ文庫)

見れば、画面には幼い俺が映し出されている。十歳前後だろうか……その傍には、同年代らしき二人の少女もいた。日本人形のような少女と、眉が太いポニーテールの少女。

強烈な既視感に襲われる。

「六年前の、あなた自身の記憶だよ」

いつの間にか、真横に幼い俺が立っていた。

召喚士と使い魔の関係になって、想太と千影は同居を続けていた。想太の新魔術を狙う魔術結社「宵の明星」を釣り出すため、想太は師匠からふたりの婚前旅行をするよう、提案される。

同居しつつも喧嘩ばかり、主従ラブコメの第三巻。二巻にもましてラブ度強めなラブコメをやりつつ、なぜこのふたりが出会い、こういう関係になったか、物語の核心に踏み込んでいる。方向性がわかりやすくなったぶんだけ、巻を追うごとにしっかり面白く、うまくなっていると感じられる。人間の事情を歯牙にもかけず好き勝手振る舞う「神様」の傍若無人に、人間同士の争いだったり恋情だったりそれ以外の気持ちだったり、シンプルだけどきれいにまとまっていると思う。良かったです。今月に出る続編も楽しみにしてます。



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赤城大空 『僕を成り上がらせようとする最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場』 (ガガガ文庫)

「私たちがいま君に行っているのは、選別ではなく育成なのだ。無駄に厳しくする必要などなにひとつない。君を伸ばすために必要なものをそろえ、そうでないものを排除する。それが育成であり、その結果が君の言うところの“ズル”のような環境だっただけの話だ」

クロス・アラカルトは冒険者に憧れる少年。しかし、あまりにその才能がないため、学園から退学勧告を受けてしまう。時を同じくして、世界最強と呼ばれる三人の美女が男探しのために学園を訪れていた。クロスの勇気に光るものを見出した三人は、クロスを自分好みの「英雄」に育成することにする。

世界最弱の少年と、世界最強の師匠=三人の美女の刺激的な修業の日々。テーマはおねショタ、もしくは逆光源氏計画な、ゲーム的異世界ファンタジー。オーソドックスで読みやすく、カタルシスもあり。尖ったところはないけど全方位的にまとまっている。過去の作風と違っているようで、実際はぜんぜん変わってないのかな。

初鹿野創 『現実でラブコメできないとだれが決めた?』 (ガガガ文庫)

「……と、まぁ。理想郷には手が届く、だから手を伸ばす。言っちまえば本当にそれだけだ」

誰よりもラブコメを愛する男、長坂耕平。「現実をラブコメにする」ために、データ収集と日々の調査で耕平は現実を作り替えることを宣言する。

第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。昨年の草野原々とはまったく違うアプローチで、ラブコメについて語るメタラブコメ。ここ数年のラブコメを多分に引用しており、読者の最近のラブコメに対する教養や、ラブコメ観あるいは世代を試すような作品になっていると思う。ステレオタイプをテーマにして、ステレオタイプを描いているけど、そういう意味では読者によって受け取り方がだいぶ変わりそう。そもラブコメの定義とはどのようなものであり、「物語」とはなんなのだろうか。描こうとしていることは草野原々と実はあまり変わらないのかもしれない。そうでもないかもしれない。見た目よりも意欲的な作品だと思うのです。



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屋久ユウキ 『弱キャラ友崎くん Lv.8.5』 (ガガガ文庫)

ただ、一つだけわかってること。

それはこの冬休み、私はなんだかモヤモヤして過ごすんだろうってことと、私は今度こそ本当に欲しかったものを手放してしまったんだなってこと。それって二つじゃんとか細かいこと言わない言わない。私のなかでこれは二つセットで一つだからそれでいいの。

じゃあ結局のところどうすることにしたかって? そんなのずっと前から同じに決まってる。

私は私らしく明るく楽しく、そしてうるさく生きるのだ。

クリスマスから年明けのあたりの出来事を集めたショートエピソード集。失恋後のみみみ、完璧努力超人たる日南の誕生前日といったシリーズのキーとなる出来事を、それぞれの視線と語りで描く。それぞれは短いけど、わりと重要かつ重いエピソードあり、そうでもないものもあり。結果的にメリハリの効いた短編集になっていたと思います。

旭蓑雄 『はじらいサキュバスがドヤ顔かわいい。④ ……だいすき。』 (電撃文庫)

「その際、幼いサキュバスたちの通う学校で特別授業を行うことになりましてね。新設された『対面搾欲苦手科』の子どもたちに」

「ちょっと待て」

ひょんなことからサキュバスたちの住む島に招待されたヤス。島はいま「欺瞞祭」の真っ最中。この祭の最中はあらゆる嘘が許され、すべてなかったことにしても許される。ヤスと夜美の距離は、この祭の間に大きな変化を遂げようとしていた。

二次元オタクとポンコツサキュバスのラブコメ第四巻。お互いの中に、自分にないものを見つけ、認め合う。狙ったわけではないと思うけど、最近流行りの自己肯定感ですね。ラブコメとしてはオーソドックスというかストロングスタイルというか。いろいろお約束を取り入れつつも、キャラクターがしっかりしているのでかわいいし楽しい。よいものでした。