- 作者: 元長柾木,目黒三吉
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2008/03/25
- メディア: 単行本
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「世界? あなたは本当に世界について話してるんですか?」
荻浦嬢瑠璃は敗北しない - はてなキーワード
「どういう意味?」
「わたしには、あなたが世界について話しているようには聞こえません。まるで、社会についての話をしているようです。そんな虚構に過ぎないものの存続を願って、本質である世界から目を背けているようにしかわたしには思えません」
「社会もまた世界とは不可分なものよ」
「社会は世界と不可分ですが、世界は社会と不可分ではありません。社会とは、所詮世界の射影、影絵に過ぎないんですから」
嬢瑠璃は断言した。嬢瑠璃は社会を持っていない。それは未成年だからではない。嬢瑠璃が持っているのは勝利者の王国だけであり、それはすなわち世界とほぼ同義だ。
元長柾木の新刊は『飛鳥井全死は間違えない』に連なるシリーズ.名づけて「ギャルゲー文芸の本命」.コピーにマスコミの横暴を感じたがまあそれは置いといて.
中身はゆんゆんとした論撃小説風物語.邪気眼持ちが少年の心を忘れず順調にストーリーテラーとして成長したらこんな話を書くのだろーなー,といった感じ.むろん褒め言葉ですよ.可能性マトリクス,自走性システム,汎人類帝国,殉教体,などなど小難しくもカッコイイ単語を駆使しているもののお話そのものはシンプルで B 級極まれり.ストーリーに小道具を散りばめるそのセンスとバランス感覚は非常に感触が好い.革命者かつ勝利者を自負するわりに隙の多い嬢瑠璃さんはたしかにギャルゲーのヒロインの素質があるかもしれないと思った.嫌いなひとはとことん嫌いそうな本かも知らんけどファウスト(今はパンドラ?)的ななにかが好きなひとならぜひ.エンターテイメントとしてさらりと楽しむもよし,深読みして哲学や宗教論に結び付けるもまたよし,ですよ.私はむろん前者でした.