フレドリック・ブラウン/稲葉明雄訳 『火星人ゴーホーム』 (ハヤカワ文庫SF)

ある日とつぜん地球全土に大挙して出現した火星人たち.迷惑極まりない火星人に翻弄される社会の混乱と狂気をある SF 作家の目を通して描く.1955 年出版のブラックユーモア SF.
やー,面白かった.火星人の生態や社会にもたらされた混乱のディテールをスライスして読ませる第一部,第二部も良かったのだけど,後半に進むにつれ加速していくドタバタ模様が抜群に悪趣味で面白い.火星人を追い払うための団結を呼びかける国連事務総長の感動ものの演説からポストローグに至る一連の流れはナンセンスなブラックユーモアの極み.今では使ったら絶対に出版できないであろう差別用語がポンポン飛び出すのもブラックに拍車をかけている.ノリノリな「作者のあとがき」や訳者による解説もやたらとぶっ飛んでいて最後まで気を抜けない.

ただ猫だけが、それぞれ最初の一、二回の体験ののち、火星人に馴染み、悠揚せまらぬ態度でかれらとつきあった。そういえば、猫というやつは昔から、どこか妙なところのある動物である。

火星人ゴーホーム (ハヤカワ文庫 SF 213) - はてなキーワード

個人的に和んだ一節.ぬこが強いのは世界共通.良かったですー.