川上亮 『僕らA.I.』 (富士見ミステリー文庫)

僕らA.I. (富士見ミステリー文庫)

僕らA.I. (富士見ミステリー文庫)

姉と僕と妹.三人家族の間に現れたもうひとりの奇妙な家族.家族のあり方を描いた SF 風ミステリ? 現実にいる人間を描いたというよりは戯画化された風を隠さず,「キャラクター」を演じているかのようなそらぞらしいキャラクターと,何かが終わったあとの空虚さと綺麗さを併せ持つ夕日の廃工場のビジュアルイメージが,物語全体に独特の作り物めいた現実感の薄さを演出している.舞台の設営と役者がぴったりマッチした例,になるのかな.ストーリーそのものは強引極まりないのだけど不思議と素直に読めて,読後感も悪くなかった.