草上仁 『よろずお直し業』 (徳間デュアル文庫)

よろずお直し業 (徳間デュアル文庫)

よろずお直し業 (徳間デュアル文庫)

目には見えないねじを巻き直すことでどんなものでも直すことの出来る男・サバロの旅と出会いの物語.
カバーにあるような「心暖まるファンタジック・ストーリー」とひとことでまとめられるようなものではないと思う.パッと見では「いい話」集なんだけど作者が「人間」に向ける目は厳しい.形の見えない「時間」や「絆」が確実に存在することを仄めかしつつも,それは「暖かい」だけの単純なものではないし,不変でもない.ということをシニカルなようでシニカルからいちばん遠い位置から描いている.どこか露悪的.あんま好きなタイプの話じゃないしラストは煙に巻かれたような感じでなんとなく釈然としないものだったんだけどね.