花房牧生 『アニスと不機嫌な魔法使い』 (HJ文庫)

アニスと不機嫌な魔法使い (HJ文庫)

アニスと不機嫌な魔法使い (HJ文庫)

第 1 回ノベルジャパン大賞奨励賞受賞作.孤児院育ちのアニスは十三歳か十四歳くらい,夢見がちな赤毛の少女.養女として引き取られることになった彼女は新しい「お父様」の優しい姿をあれこれ妄想,胸膨らませる.しかし彼女の前に現れた養父は彼女とさほど歳の変わらない,いつも不機嫌そうな魔導師の少年だった.
中世風の世界に魔法,ドラゴン,石造りの塔の居並ぶ正統派ライトファンタジー.雰囲気は「カルナの冒険」が近いかな.オーソドックスなラインに則りながらも,ドジだけど健気で決して挫けず,ころころ表情の変わる元気なアニスを追いかけるお話はそれだけでもわりと楽しい.「不機嫌な魔法使い」シドや脇を固めるキャラクターもくっきりした自己主張で話を彩る.キャラクター作りの勝利,かな.萌え方面に特化しているわけでもなくバランスの取れたキャラクター作りに成功していると思う.クライマックスのゆるい意外性もあって,イラストがなければ普通にジュブナイルファンタジーとしていけるんじゃね? といった感じ.面白かったです.