神林長平 『太陽の汗』 (光文社文庫)

太陽の汗 (光文社文庫)

太陽の汗 (光文社文庫)

発達した自動翻訳機でのコミュニケーションが当たり前になった時代.世界通信社の特派員ソール・グレンと技師の JH は情報収集機械のウィンカが消息を絶った南米に向かう.
面白かった.目の前にいるのに表情も感情も読めないコミュニケーションの不自由と違和感,翻訳機械が有能であるがために生まれる行き違い,そして機械やネットワークといった他者を通じて決定される世界と自分の存在.「翻訳」を通じてなされるコミュニケーションの描き方は今でもぜんぜん古びた感じがしない.むしろ誰でもネットを利用出来る今だからこそ違和感が強く実感できる気がする.微妙に噛みあわずかといって大きくずれもせず,なんとなく進行するコミュニケーションのありようは「不気味」とか「恐怖」というよりはもっとぼんやりとした,「違和感」という言葉がいちばんしっくり当てはまる.ベタいうえに分かりにくい感想で申し訳ねぇことです.