相原あきら 『釘男』 (アスキー・メディアワークス)

釘男

釘男

深夜の小学校で男性教師が殺害される事件が起こった.容疑者に浮かんだのは"クギ男"と呼ばれる,小学生たちの間で噂になっている都市伝説のような変質者.生活安全課所属の猪瀬警部補と柿沼刑事は管理官からの直々の依頼により,所轄とは別にクギ男を追うことになる.
クギ男の存在と正体を巡るミステリ.泥臭い 2 時間サスペンス風物語,と呼ぶほうがしっくりくるかな? お話のつくりはいかにも俗っぽいけどこれはこれで悪くない.ステレオタイプを前面に出した登場人物たちが汚い腹の内をぐちぐちと探り合うなか,飄々と動き回る猪瀬とそれに引きずられる柿沼の凸凹コンビ.徐々に明かされていくクギ男の正体と殺害の動機(これまた俗っぽい)."クギ男"に対峙するまではともかく,そこから決着にたどり着くまでがあっさりしすぎでミステリファンからは総スカン食らうかも分からんけど,2 時間サスペンスってのはこういうもんだしな.不思議な幕引きは続編を意識してのもの?
デビュー作の感想はこんな感じ.だったのでわざわざハードカバーで出すからには何かあるに違いないと勘ぐって釣られた私なのだけど案外悪くなかったと思う.でも確かに電撃文庫向けの内容じゃないとはいっても税込み 1,995 円はちと高いよ.