高野史緒 『赤い星』 (早川書房)

赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

吉原一の花魁はロシア皇后の座を渇望し、ペテルブルクの侍は悪魔と契約した(帯より)

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現皇帝に暗殺されたと噂の皇子は秋葉原に潜伏し,公方の後胤を自称する太夫は皇后の座を狙い皇子の情報収集を江戸の女ハッカーに依頼する.江戸はネット以外の情報伝達手段がほぼ途絶えた状態.人々は夢の都ペテルブルクの永住権を目指し冬季シベリア横断ウルトラクイズに参加する.そのペテルブルクでは不穏な空気が漂う.
江戸とロシア,仮想と現実,過去と現在と未来がごたくたにリミックスされたバロックでチープな世界が魅力的.ってかそれがこの話のほぼすべてのような気がする.アニメやゲームやネットに侵食された江戸は幻想的というよりは素敵な悪ふざけの風情.というかただのバカ小説? 半ばでなんとなく世界の構造が読めるとか最後まで読むと実はたいして得られるものがないとか物足りなさがないでもないけど,次々に繰り出される俗な仕掛けのおかげで読んでいる最中は退屈しない.楽しかった.
ブルガーコフはもちろんギブスンさえ読んでない私の感想なのでお手柔らかによろしく.