フレドリック・ブラウン/井上一夫訳 『73光年の妖怪』 (創元推理文庫)

地球から 73 光年の距離にある惑星から流刑にされてきた知性体.アメリカの田舎町に飛ばされた"彼"は本体は小さく弱いが生物の意識を乗っ取り体と記憶を我がものとする能力を持っていた.もといた星に帰ることを切望する"彼"はその能力を生かし行動を開始,休暇のために田舎町へ逗留にきた MIT の教授に狙いをつける.
「猫=スパイ」というあれはこの物語が最初だったのかぁ.眠っている生物にしか乗り移れない,いちど乗っ取った体から抜けるにはその体を殺さなくてはならない(苦痛はない)など,万能なようで多くの制約の課せられたなかで試行錯誤する知性体.体を(知らぬ間に)狙われながら,知性体の行動の穴を見つけてだんだんと核心に迫っていく教授.二者の静かな対決が抜群に面白い.無味乾燥なようでうっかりも多い,そしてさまざまな地球の生物(とうぜん人間も含む)を乗り捨てるうちにだんだんと地球の生物らしい知恵と情緒(?)を獲得していく知性体はとんでもない萌えキャラさんですね.人間以外だったら乗り移るには猫がベストだと結論づけるあたり,もう決定的ですね.もっかい書きますが抜群に面白かったです.