アンナ・カヴァン/山田和子訳 『氷』 (バジリコ株式会社)

氷

地球規模の気象異常によって徐々に勢力を増す寒波と氷に覆われ,ただ滅びを迎えるのみとなった世界において,ひとりの少女を求めて彷徨う男.
SF というより幻想小説なのか.現実/現在/妄想/幻想が交差してどれがどれともつかない文章は決して分かりやすくないものの幻想的でどこかはかなげで荒んでいる.それにしても「男」の行動の鈍くささにはいらいらさせられた.少女を追っている間はただそれのためだけに必死で生きていたような男が,追いかけ追いつき,手に入れたら途端に目的を見失い,どう態度をとったらいいのか分からなくなるという.終末のヴィジョン云々にかこつけて純情童貞の妄想と現実の越えられない壁を描いたもの,あるいは(誰かも書いていたように)合法ロリ小説という解釈でよろしいのかしら.うむ,よく分からんけど面白かったです.