J・G・バラード/柳下毅一郎訳 『クラッシュ』 (創元SF文庫)

クラッシュ (創元SF文庫)

クラッシュ (創元SF文庫)

六月の夕暮れ,バラードは雨上がりの道で車をスリップさせ,正面衝突を起こした結果,事故の相手を死に至らしめた。その事故の直後から,謎の男ヴォーンが彼の周囲に出没する。エリザベス・テイラーとエクスタシーの中で衝突死するという妄想に異様な執着を持つ男。バラードと妻キャサリンは,いつしか重金属と血と精液で構築されたヴォーンの悪夢装置に組み込まれてゆく。

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約 10 年ぶりにバラード読んだ.凄かった……! 序文に曰く「世界最初のテクノロジーに基づくポルノグラフィー」.自動車事故による破壊・人体損壊,あるいは死によってのみ激しいエクスタシーを感じる男ヴォーンの存在感が何より凄まじい.自動車事故のシミュレーションに勃起し,事故現場で写真を撮りながら射精する変態男でありながら,肉体/機械の細密で一体になったかのようなシームレスな描写が強烈な説得力を与えていた.個人的にぐっときたのはクライマックス前のバラードの運転する車中でのカーセックス.台詞を一切入れず,車を扱うように娼婦を抱くヴォーンのセックスはまるで何かの儀式のよう.侵しがたいなにかがあった.
「セックスとテクノロジーの婚姻」.凄かったです.