ジョー・R・ランズデール/尾之上浩司編/尾之上浩司・他訳 『現代短篇の名手たち4 ババ・ホ・テップ』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

現代短篇の名手たち4 ババ・ホ・テップ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

現代短篇の名手たち4 ババ・ホ・テップ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

「テキサスのスティーブン・キング」ことランズデールの日本オリジナル短篇集.全 12 篇.
『ステッピン・アウト、一九六八年の夏』はええかっこしいのボンクラが絵に描いたような悲惨な目に遭う話.個人的にはこれがベスト.ゲラゲラわろた.
草刈りのために雇われた全盲の男にあれよあれよとすべてを奪われる男の悲劇『草刈り機を持つ男』.するすると進む不条理は『乗越駅の刑罰』とか『懲戒の部屋』あたりに雰囲気が近いかな.ホラー.
"矯正"された怪獣たちの生活を描くゴジラの十二段階矯正プログラム』は鋳造工場で自動車のスクラップ処理の仕事に就くゴジラ,ボケ老人のように腑抜けきりバービー人形をいじくるだけの毎日を送るキング・コングほか,面白おかしくどこか哀しい.
エルヴィスは実は死んでいなかった.老人ホームで死にかけているだけだった.『ババ・ホ・テップ(プレスリー VS ミイラ男)』はそんなエルヴィスとなぜか現れたババ・ホ・テップ(田舎の王)との最後の決戦を描く.ジジイどもの奮闘にこれまたゲラゲラ笑い,だんだんと手に汗握り,最後はしんみり.エンターテイメントの味噌がみっしり詰まった短篇だと思う.
母オリータの思い出をシンプルに綴った『オリータ、思い出のかけら』は最後の段落でぎゅっと掴まれた.これはもうちょっと長い尺で読みたい気がする.