ジェイン・オースティン/阿部知二訳 『高慢と偏見』 (河出文庫)

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫)

独身の男性で財産にもめぐまれているというのであれば、どうしても妻がなければならぬ、というのは、世のすべてがみとめる真理である。

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18 世紀末,イギリスの田舎町に二人の夫婦と五人の娘たちのベネット家が暮らしていた.男の子のいないベネット家において,母であるベネット夫人は娘たちに相応しい嫁ぎ先を見つけることを何よりの生き甲斐としていた.そんなベネット家の近隣の荘園に,独身で資産家のビングリー氏とダーシー氏が訪れてくることとなった.
イギリスの古典ラブロマンス小説.財産や家柄,体面その他,極めつけに互いの高慢と偏見.様々なものにきうきうと挟まれながら,二人が結ばれるまで.己の利益や快楽のためなら(権力の範囲で)何でもやりかねない登場人物たちは言われるように本当に写実的で,生き生き,というよりギラギラという形容がぴったり.ただでさえ付き合うのが面倒くさそうなひとたちに,金とか家柄とか,面倒くさそうなもん与えちゃいけねぇな.どちらの面倒が先にあるのか分からんけど,高慢と偏見が二人のみならず,当事者全員のものの見方を歪める様子は凄まじく滑稽であり.誰かが婚活小説と言ってた気がするが,なるほど面倒くさいのは普遍的なのだなあ,と.